リーダーシップ開発・教育

【東芝グループ実例】グローバルな舞台で活躍出来る人材の育成を目指す企業の試みとは | 2020.04.01

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東芝グループの社員研修・教育を担う東芝ビジネスエキスパート株式会社の富岡氏と、東芝様で「グローバル人材基礎コース」研修を担当するEQパートナーズ講師2名に会社組織でのグローバル教育について語っていただきました。

【東芝様の階層教育と「グローバル人財基礎コース」の位置づけ】

EQパートナーズ(以下EQP):
東芝ビジネスエキスパート株式会社(旧社名:東芝総合人材開発株式会社)様では、株式会社東芝および東芝グループ各社の社員研修・教育を担当されています。御社の研修体系における「グローバル人財基礎コース」の位置づけを教えていただけますか?


冨岡鉄平氏(以下 冨岡氏):
入社3-5年目の社員を中心に受講いただく研修です。
以前は選抜研修として実施していましたが、2015年度より必修研修となり、多くの方に受講いただいております。


EQP:
EQパートナーズは「グローバル人財基礎コース」の中の「グローバル人財の基本」に安部哲也講師・李道明講師を、そして「グローバルネゴシエーションの基本」に若林計志講師を派遣しています。
この「グローバル人財基礎コース」は年間何人ぐらいの方が受講されていますか?


冨岡氏:
年度によって多少変動はありますが、年間20回前後の開催で、東芝グループ全体の中から、500-600名が受講します。


EQP:
研修の目的・狙いは何ですか?


冨岡氏:
今後、東芝グループでは国内事業に限らず、海外、というシナリオが加速していくと考えられます。そんな中、「グローバル人財基礎コース」は、グローバルの理解と教養を深めるための重要な位置付けになっています。
ミクロの視点、そしてマクロの視点からも当社の事業全体がどうなっていくのかについてイメージをつかむことが重要です。それができるようにするためのグローバル研修は、スタート地点だと思います。まず研修で現状に気づいてもらい、そこからは自分自身で勉強を深めようという意欲を高め、グローバルマインドの重要性を感じ取ってもらうというのが大きな狙いです。


EQP:
東芝グループの経営理念「人と、地球の、明日のために。」も、まさにグローバルマインドを表していますね。

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冨岡氏:
はい。東芝では以前から「東芝グローバル人材」というあるべき従業員像を目指し、定期的に振り返る研修を実施してきました。これは「海外駐在する社員だけでなく、国内事業に携わる人材もグローバルの観点を持とう」という狙いで継続的におこなわれていたものです。


2018年度からは全社的に「人と、地球の、明日のために。」という理念のもと、従業員の存在意義として「新しい未来を始動させる。」というスローガンが掲げられました。それを遂行していく従業員の価値観は「誠実であり続ける」「変革への情熱を抱く」「未来を思い描く」「ともに生み出す」です。それまでと大枠が変わったわけではありませんが、新しい理念体系を基に、全社変革計画「東芝Nextプラン」も加味して階層教育を組み立てて、現行の「グローバル人財基礎コース」研修もそれに合わせたものとなっています。


【「グローバル人財基礎コース」研修の効果について】

EQP:
「グローバル人財の基本」「グローバルネゴシエーションの基本」研修の前後では、受講者の方々にどんな変化が見られますか?


冨岡氏:
アンケートからも、私が見たところでも、受講前より「もっと学ばなければならない」という学習意欲と必要性が大きく高まっています。受講者自身が、自分の事業領域で今後の未来を見据え、「自分はどうあるべきか」についてリアルに考え始めるという効果が出ています。そのような変化とともに、現場で即実践できる教育をしてもらっていますね。


安部哲也講師(以下 安部講師):
各受講者は、研修でアクションプランを作成して職場に持ち帰り、実践するようにしていただいています。


冨岡氏:
はい。研修で刺激を受けても何もしなければそのうち忘れてしまいますから、研修での学びを具体的にどう行動に変えるかを考える良い機会になっています。


EQP:
冨岡様からご覧になって、安部講師・若林講師について、どのような印象をお持ちでしょうか。


冨岡氏:
安部講師からも若林講師からも、講師自身が歩み・学びを止めない、日々学ぶという姿勢がまず強く感じられます。ファクト(事実)をベースに、現状とあるべき未来の姿を示してくれる。それも、独自の切り口からというだけではなく、世の中の事象をしっかりとキャッチした上で「こうあるべきだ」と一貫性を持って示してくれることが、両講師に共通しているところです。
受講者アンケートでも高い評価になっているのは、2人の講師がそれぞれ日々実践している体験を言語化してくれているからで、研修内容に一貫性が生まれ、受講者にとっても説得力があるんですね。


EQP:
研修内容については、いかがでしょうか。


冨岡氏:
受講者が興味を抱くような参考になるもの、一般教養的なことを、ご自身の体験談を交えながら合間で紹介してくれているのが良いと思います。「マネジメント」や「ネゴシエーション」といった専門性を深く掘り下げるだけではなく、幅広い視点を踏まえた上で、今研修で伝えてくれているものがあるんだということを、受講者が感じることができる。そこがいいなと思います。「講師が触れていたあのエピソードについて、自分でも掘り進めてみよう」といった知的刺激を得ることが出来る研修ですね。


受講を通じて、(各受講者の)頭の中でいろいろなパラダイムシフトが起こる、入社して初めて受けるタイプの研修だと思います。自分の固定概念・経験を俯瞰的に眺めることでモノの見え方が変わる研修と言えると思います。
特にグローバルな環境の中では、自分にとって当たり前だと思っていたことが非常識であると気づき、自分の偏見(バイアス)を客観的に認識して、どんどん自己修正できることが重要です。ただ、それが自然にできるようになるのを待っているだけでは手遅れになることもある。だからこそ積極的なトレーニングが必要で、その手段としてグローバル教育をおこなうことが、当社にとって極めて重要な意味を持つんです。
トレーニングということでは、研修で学んだ考え・スキルを応用して「やってみよう」と思えるケーススタディーを多数用意していただいています。


若林計志講師(以下 若林講師):
はい。座学だけではなく、実際に体を動かす模擬交渉(ロールプレイ)を通じて「なるほど」という腹落ち感を持っていただき、内省を通じて深く学べるサイクルを作るのが狙いです。研修の回数を重ねることで、内容もブラッシュアップしています。


【これからの研修のあり方】

EQP:
今後どのような研修体系を構築していきたいとお考えですか?


冨岡氏:
これからのテーマとしては、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)は外せないと思います。「グローバル人財とはなにか」「階層ごとに求められるリーダーシップはなにか」「チームを作っていくマインドセットはどうするか」などの問いかけに、DXは不可欠です。ただ一方では20年後、30年後、50年後も変わらない人間力やリーダーシップはあるはずです。したがって、中長期的なトレンドはおさえつつも、スキルや知識を獲得するだけではない人間力・リーダーシップを養っていく研修が必要でしょうね。


もともと東芝は何度も世の中にイノベーションを起こして発展してきた会社です。その東芝本来のDNAを発揮し、これからも時代を作っていく先駆者を目指していかなければならないと考えています。そのためにも、変革の勇気やヒントをもらって帰れるような研修が必要だと思います。


安部講師:
DX時代に入っても、「なんのために会社が存在するのか」といった価値観やマインドセットは変わらないはずです。その軸をブレさせない、基盤は変わらない普遍的な研修の実施が必要だと考えます。


若林講師:
アマゾン創業者のジェフ・ベゾスは、「世の中で変化しないもの、20年後も変わらず人が求めるものを、技術的にどう実現するかがキーだ」と言っています。
トレンドを追うことももちろん必要だけど、人の根源的な欲求は何なのかを理解するためのファンデーション(基盤)がこの研修で出来れば、その上に積み上げていくときにグラグラしませんね。


冨岡氏:
今の「グローバル人財基礎コース」は、まさにそれができている研修で、だから安部講師・若林講師の研修は人気がある。受講者の腹落ち度が高いので、満足度も高い。業務のどのような局面でも、自分らしくやるべきことがあるはずと気づける研修ですね。

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写真:左から若林講師、冨岡氏、安部講師


【東芝様の強みと今後について】
EQP:
講師は東芝様のこれからの可能性をどのように捉えていますか?


若林講師:
どんな会社も、うまくいっているときには新しいチャレンジは出来ないものです。ただ時代に合わせて人も組織も変わらなければならない。今の東芝様はまさに過渡期にあって、それをチャンスと考える社員がいて、また新しく入社して来ているのだから、むしろこれからが面白い会社ですよね。


冨岡氏:
そうかもしれません。


安部講師:
他社は研修を流行に合わせて毎年変えるところが多く、会社の経営状況で階層教育をやめたりするところも多くあります。その点東芝様は苦しいときも含め、長期間一貫して研修を実施されている。これは、今の経営理念にも引き継がれていますね。
東芝グループの強みは、ブレない一貫性。人を育てるための教育体系を継続されているというのも、人を基軸にする経営をされていることの表れだと思います。
失礼ながら、会社の大変な時期に研修をやめようという動きはなかったですか?


冨岡氏:
重複する内容がないよう見直すということはしましたが、大変だったときでも階層教育は地道に継続していきました。会社の節目を、研修全体のブラッシュアップ・見直しの機会としたんです。


安部講師:
会社が苦しいときでも研修はしっかり続けるのが素晴らしいところですね。社員の方々も勇気づけられたことと思います。


冨岡氏:
だいたい、会社の状況が厳しい時には、ついつい即効性のあるものに目がいきがちで全精力を注ぎこんでしまいますが、従業員の教育についてはすぐに結果が出ないこともありますが、教育についてはしっかり継続性と一貫性をもってやっています。それは、近い将来に必ず実を結ぶと信じています。


安部講師:
社員の価値観とされている「誠実」「情熱」「未来志向」「共創」のうち、「誠実」「情熱」「共創」は東芝様の強い部分であると思います。弊社が研修を通じて今後サポートさせていただきたいのは、特に「未来志向」の部分と考えます。新しいビジョンを描いて何を変えていくかが、課題ではないでしょうか。特に、「グローバル人財基礎コース」の受講者のような若い社員層が変わるきっかけ作りのお手伝いが出来たらと思います。若い人のアイデアや発想を新しいビジネスモデルにできると素晴らしいですね。


冨岡氏:
会社でも、社会でも、これだけいろいろなことが起こって「変わらなきゃ」という気持ちが社内に強まったと思います。若手の柔軟な発想が形になるような風土づくりが必要ですね。若手には強い思いを持って欲しいです。


安部講師:
DX時代とは、若い人が上司よりもスキル、特にデジタルスキルを持つというかつてない時代です。ミレニアム世代やZ世代がDXの起爆剤になっていくでしょうから、上のほうは
許容して、どんどん前に向かって挑戦させることが大事だと思います。

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EQP:
若林講師の「グローバルネゴシエーションの基本」では、いかがですか?


若林講師:
「協調的交渉」「シンプルかつパワフルな思考フレームワーク」「現場で使える」の3つの軸を意識して研修を組み立てています。
ビジネス交渉の多くは勝ち負けではなく、その後のパートナーシップを構築するために行うので、5年10年のスパンで見たときに「お互い合意してよかったね」という状態をいかに作るかがポイントです。
もちろん「絶対勝たなければならない」ときも「敵対的な状況でいかにダメージを回避するか」といったシチュエーションもありますが、基本的にはお互いにハッピーになる状態を作るにはどうすればいいかを理解いただける「協調的交渉」をレクチャーしています。

また状況を客観的に分析していただくための思考フレームワークを提供しています。
交渉では「感情に負ける」「勝ちたい思いが先行する」といったことがよく起こります。フレームワークを通じて、客観的かつ俯瞰的に、考えていることを整理し、十分に準備することが大切です。そうすることでお互いに「手段」から自由になり、妥協ではない解決策がでてきます。これは「未来を創る」という東芝様が目指すところに近いと自負しています。

「現場で使える」というのは、研修を終えた後、このワーク等が実際に明日から職場で使えるものであるということです。さらに交渉をグローバルなコンテクストで捉え、「自分が知らない価値観を持つ人とコミュニケーションするのは、なんだか面白い」という感想をもっていただくことで、さらに深掘りするスタートラインを作れればと思っています。


冨岡氏:
まさに理想的な研修ですね。

EQP:
東芝様ではグローバル研修部の他に、経営研修部、営業研修部と部署をお持ちですね。


安部講師:
経営研修部の選抜型「新任事業部長・支社長研修」には、私も出講させて頂きました。事業部長や支社長になった方々にグローバル人財基礎コースの若手の受講者の状況、強み、弱みや悩みなどをお伝えし、逆に新任事業部長の考え方や悩みをグローバル人財基礎コースの受講者にシェアすると、どちらもよく聞いて下さっていました。

営業研修部の「ロジカル・シンキング」「クリエイティブ・シンキング」「戦略・マーケティング」「チーム・コミュニケーション力強化」などの研修でも、各講師が情報共有しながら、複数の講師体制で東芝グループの総合的な人材・組織育成に貢献できる研修をご提供させていただいております。


若林講師:
東芝様の野球部、ラグビー部の方々への研修も担当させていただきました。海外スタッフ向け研修では、英語による研修も実施しています。


EQP:
講師から見て、東芝様の受講者はどんな可能性を持っていると考えていますか?


安部講師:
真面目さ、理解度の高さという点で、学習能力が高いのは間違いないですね。成長意欲も高く、何より各自が自分の仕事に誇りを持っていると思います。これがすべてに勝ることではないかと感じます。


冨岡氏:
それは当社の強みだと思います。


若林講師:
東芝様はフィロソフィーをしっかり持っていらっしゃいますね。この部分を大事にして、迷ったときには全員がそれを拠り所にして判断ができる、ときには部門や上下の関係を超えて、和気あいあいと議論できる風土を作ることが重要ではないでしょうか。


冨岡氏:
組織としてのフィロソフィーということでは、以前は「リーダーが率先してやってみせる」という気風が強く、これがプレイングマネジャーの出現しやすい風土となっていました。しかし、リーダーシップにはトップダウンももちろんですが、部下のやる気を促す、傾聴するなどのフォロワーシップの要素も重要で、それはお2人の研修からも教えられています。私も、リーダーシップは先天性のものだけではなく、多くは開発できると考えています。
どんな人もトライ&エラーを繰り返し成長し続けることが大切で、それをよしとする価値観が共有されれば、良き風土ができあがり、そこからまた東芝の新しいフィロソフィーが形づくられていくことができたらいいですね。東芝にはそれができる優秀な人材が多く揃っていると考えています。

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