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中国 香港・深圳・広州視察レポート1
深圳の6年が示す「地殻変動」と日本企業への重要示唆

皆様
いつもお世話になっております。
今月号では2026年3月初旬に実施した「香港・深圳・広州ビジネス視察」の速報をお届けいたします。
その中でも、特に変貌の激しい「深圳」に焦点を当て、その圧倒的なスピード感・スケール感と、日本企業が直視すべき本質的な変化について情報共有いたします。

■ 中国・深圳の変貌 〜2019年から2026年への非連続な進化〜

まず、前回(2019年7月)の視察と比較すると、わずか6年で深圳はテクノロジー面・インフラ面において「別次元の都市」へと進化していることに大きな驚きを感じました。

① ロボットタクシー(自動運転タクシー)の「実験段階」から「ビジネスモデル化」への移行
今回、筆者は中国のスタートアップPony.ai(小馬智行:2016年創業、売上約100億円[推定]、利益は赤字)が運行するロボットタクシーに乗車しました。
完全無人走行:スマートフォンで呼び出し、一般道において発車・停車・信号認識・車線変更などをすべて自動で実行。周囲には人が運転する車やバイク、歩行者がいる中で運行されています。
人間以上に慎重かつ安定した運転:運転席に誰もおらずハンドルが自動で動く様子には当初違和感を覚えましたが、発車・停車・左折・右折いずれも非常に丁寧で、次第に安心感が高まりました。万が一に備えた緊急停止ボタンも設置されています。
プライバシー性の向上:車内に他人である運転手がいないため、完全なプライベート空間が確保される点もメリットといえます。
コスト構造の変化:自動運転車は初期投資こそ必要ですが、人件費が不要となるため、運賃は有人タクシーと同等もしくはそれ以下に低下する可能性があります。また、保険料も人間ドライバーの半額程度とされています。
示唆:安全性の追求という技術開発フェーズは収束に向かいつつあり、今後は「いかに既存事業のコストを削減するか」「いかに収益性を高めるか」「いかに競争優位を確立するか」というビジネスモデル競争へと移行していると考えられます。

自動運転車へ試乗した際の様子
【動画*音声あり】自動運転乗車中の様子
全方向にカメラがあり人間や障害物を感知しています

② ドローンによる「低空経済」の社会実装
今回、筆者はMeituan(美団:2010年創業、[推定]売上約7兆円利益約7,000億円)が運営するドローンデリバリー(飲料・軽食)を体験しました。
約1分間隔で離発着するドローンは、コスト削減や効率化だけでなく、「顧客体験価値」を大きく向上させています。かつてドローンは「玩具・撮影用途」に限定されていましたが、現在は「物流・交通インフラ」へと進化しています。
ドローン配送の実用化:現時点では離発着場所は限定されているものの、専用ポートへの配送が日常的に行われています。
空のインフラ整備:ビル屋上にはドローンポートが設置され、低空域の管制システムが機能しています。現在は許可制で飛行ルートが管理されています。

ドローンデリバリーの様子

これらの自動運転車やドローンデリバリーは、深圳の進化の一部に過ぎませんが、本来、中国以上に人口減少・高齢化が進み、人手不足や社会インフラ維持の課題を抱える日本こそ、導入を加速すべき分野であると考えます。
一方で、日本においては政府による過度な規制と、企業側の過度なリスク回避姿勢が大きな障壁となっている可能性があります。
元ハーバード大学/一橋大学の竹内弘高教授が指摘されている
「分析しすぎ、計画しすぎ、コンプライアンスを意識しすぎる」
という傾向は、日本の構造的課題の一端を示していると考えられます。

■ 深圳が生んだ世界企業のインパクト(最新財務データ)

企業名創業売上高備考
Huawei
(華為)
1987年約14.8兆円制裁を跳ね除け、通信インフラ等で再成長。 スマホなどの通信機器に加え、EV(電気自動車)も製造販売。
BYD
(比亜迪)
1995年約12.6兆円以前は電池の会社であったが、EV事業に進出。中国国内で成功し、輸出台数が急増中。EV販売でテスラと世界市場で首位争い。
Tencent
(騰訊)
1998年約12.8兆円ゲーム関連事業でスタートし、現在はsns WechatやWechat Pay 等で中国のインフラ企業と成長。
DJI
(大疆創新)
2006年~約1兆円(推)民生用ドローンの世界シェア約7割を独走

※2023年度決算および2024年発表推計値より(1元=21円換算)

■ 成長の本質:中国グレーターベイエリア(大湾区)の垂直分業

現在の深圳の強さは、単一都市の枠を超えた「グレーターベイエリア(香港・深圳・広州等)」のエコシステムにあります。

  • 香港(頭脳): 金融・法務・知財のハブ。
  • 深圳(心臓): R&D・プロトタイプ製造の高速回転。
  • 広州・東莞(筋肉): 圧倒的な量産キャパシティ。

この「半径100km以内で、企画から量産までを数週間で完結させる」物理的スピードこそが、日本企業にとって大きな脅威であり、活用のチャンスでもあります。
例えば、新しい商品企画ができた場合、商品化まで日本では数か月以上かかるものが、このエリアを活用すれば、数週間で完成できる可能性があります。

■ 人材開発・組織への示唆

今回の視察で確信したのは、これは「戦略の差」ではなく、「人材と意思決定のOSの差」であるという点です。

  1. デジタル・AI前提のビジネス設計: 既存の仕組みを「デジタル化」するのではなく、最初からAI化・デジタル化なしでは成立しないビジネスモデルを組んでいく。
  2. 「まずトライしてみる」アジャイル文化: 規制や安全性などを議論、検討しすぎず、プロトタイプで実験、実装し、データを集めながら、改善、ビジネスモデル化していく。
  3. 現場への圧倒的な権限委譲: 現場や顧客を良く知る20〜30代の若手に、一定規模のプロジェクトを任せ、圧倒的なスピードで回す組織風土づくり。

■ みなさまへのご提案

「中国の進化は特異な環境によるもの」と切り捨てるのは容易です。しかし、彼らが磨き上げた「AI/データ化」、「無人化」、「高速プロトタイピング」の技術は、近い将来、必ずグローバル市場や日本市場で貴社と競合することになると思われます。

  • 次世代経営者・リーダーの深圳視察による「危機感・スピード感の醸成」
  • AI/デジタル・ネイティブな新規事業の立ち上げ
  • 中国企業のスピード感を自社に取り入れるためのアジャイル組織変革

これらの課題について、今回の視察データを元に具体的なディスカッションをさせていただけますと幸いです。

[編集後記]
筆者自身、1996年から2000年までパナソニックの香港駐在員として、香港を中心に、中国深圳・東莞・広州などを担当していました。
しかしながら、当時、この記事で取り上げた、HUAWEI,BYD,TENCENT,などは全く無名の企業でした。それから約25年の間に中国だけではなく、世界でも知られる企業に成長するスピード&スケール感は、今の日本企業では考えられないことだと思います。
また前回2019年の視察からの約6年間の変化も目を見張るものがあります。
日本国内にいると変化が遅いため、あまり世界は変化していないように感じられますが、中国をはじめ、台湾、シンガポールなどのアジアや米国などは日本の何倍ものスピードで変化し続けています。
また昨今の生成AIとフィジカルAIがこの変化を数段加速させつつあります。
我々自身、世界から取り残されないよう、ミッション(使命)やビジョン(将来像)を描き、学び、成長、挑戦を続けていくことが不可欠だと考えます。

2026年4月
EQパートナーズ株式会社 代表取締役
立教大学大学院 客員教授
安部哲也

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