「新入社員・Z世代とのコミュニケーションと育成方法」公開セミナー報告
「新入社員・Z世代とのコミュニケーションと育成方法」
離職やパワーハラスメントなどとならず、成長させるために
講師:冨田香織氏
2023年6月27日にEQパートナーズにて開催した公開セミナーについて一部内容を抜粋してご報告致します。
セミナーの内容
・堀井利江(EQパートナーズ執行役員)より
・ご講演
・講師紹介
・1. 世代間ギャップについて
・2. Z世代の一般的な価値観
・Z世代の価値観の傾向
・新入社員・Z世代から感じること
・傾向を表すデータ
・Z世代の傾向の背景
・3. Z世代とのコミュニケーションのコツ
・新入社員への期待
・新入社員に伝えていく中で響いていること
・最後に(EQパートナーズより)
堀井利江(EQパートナーズ執行役員)より
皆さまの企業で、新入社員をお迎えのところもあるかと思います。新入社員の皆さんはお元気でしょうか。また育成担当の方々もお疲れでないでしょうか。
新入社員の3年間離職率が3割という事はこのところ変わらないと言われています。本日のサブタイトルである『離職やパワーハラスメントとならずに成長させる』という事は、そのような現状において、非常に重要になっています。
冨田講師はビジネスの世界で数々の成果を出されたあと、現在は人材開発コンサルタントとして活躍され、EQパートナーズでも多数の研修で講師をご担当頂いています。
本日は宜しくお願い致します。
ご講演
講師紹介
大学卒業後に不動産ディベロッパーに入社し、3年目に年間販売数1位を達成しました。2008年にプルデンシャル生命保険株式会社に入社し、1年目から海外表彰を受けています。
その後、管理職を8年間経験しました。20代の社員教育が主でしたが、管理職3年目まではチームのメンバーが育たず大きな挫折を感じました。
そこで、コーチングのトレーニングを受けて部下指導を行い、業績をV字回復させることができました。600超あるチームのTOP0.2%が達成する業績基準をクリア。歴代2人目、最速の女性の支社長として支社経営を行いました。
2018年に独立し、現在は営業強化を主軸として新入社員から管理職まで幅広い層に研修を行っています。
2019年にGallup公認ストレングスコーチを取得し、大手外資系企業はじめ様々な企業にストレングスファインダーを使った自己能力開発・チームビルディングの研修を行っています。
1. 世代間ギャップについて
世代間ギャップ=世代間で感じる価値観・思考の差
世代間ギャップは、世代間で感じる価値観・思考の差の事です。
上の世代にとっては、27歳以下のZ世代(概ね27歳以下)と感じるギャップとして、「スマホでゲームばかり」「個人主義」「スピード」「好きなことはやるがいやなことはやらない」「自身の成長を望む」「ネットリテラシが高い」「仲間意識」「デジタルネイティブ」「人前で褒められたくないなど」などが挙げられています(受講者の声)。
昨年2022年のBiz Hits社の調査によれば、世代間ギャップを感じる年齢差は、「5歳〜9歳差」が9.5%に対して、「10歳から14歳以上」が44.9%、「15歳から19歳」が18.8%、「20歳から24歳差」が21.2%なっており、10-14歳以上差があると世代間ギャップを感じる人が多いようです。
また、『最近の若い者は…』の台詞は、今も昔も存在します。紀元前2000年ごろの粘土板にも記述があり、古代ギリシャのプラトンも書簡に書き残しているほどです。世代間ギャップは昔からあるのです。
なぜ、今、扱い方を悩む声が聞かれるのしょうか
近年、多くの企業はビジネス環境の変化の中で、下記のような問題を抱えています。
- 慢性的人材不足
- 市場の競争激化
- 人的コストの増加
- 転職市場の活性化
このような中で、若くてかつ優秀な社員が離職しまう、という状況に悩む企業の方のお話をよく耳にします。なぜ新入社員は定着しないのか、どうしたら定着する組織づくりができるのか、多くの方の関心を集めています。
別の言い方をすれば、若手にとって「魅力ある組織」づくりが求められているのです。
2. Z世代の一般的な価値観
Z世代の価値観の傾向
Z世代とは27歳以下を指します。ジェネレーションX以上がアナログ、以下がデジタル世代です。
以下がミレニアル世代・Z世代の価値観の特徴とされています。
- デジタルネイティブ、アナログに弱い
- 多様性の共感
- 社会問題への関心や貢献意識が高い
- 所有欲が低い
- 保守的である
- ミレニアム世代よりZ世代はコスト重視・現実的
- 怒られることに慣れておらず、悲観的な面も強く挫折しやすい
新入社員・Z世代から感じること
- 誰かが完璧な答えをもっていると思っている
→効率的な仕事をするために、誰かの意見に信頼を寄せその通りに行動する傾向がある
→特に社歴の長い人や信頼できる人に依存・思考の停止 - 相手の反応を過剰に受け止める
→なぜその反応をしたかどうか、追い質問などをしない - 相手の感情を想像しすぎてコミュニケーションを遠慮する
→質問・深堀してこない背景もあるかもしれない
《具体事例》
私が担当した研修での具体例です。老舗和菓子屋の売上向上施策をグループで考え、事業立案を行う研修でしたが、そこで感じたことは
- どのチームも顧客役のヒアリング後に、過去の費用対効果の情報を求める
- 顧客に聞かれたことをそのまま上司に質問する
- 顧客役の反応が悪かったことを過剰に受け止め、すぐに自分達が一生懸命考えた策をとりやめる
- 質問はないが、返事は良い
- 深堀をしてこない
という事でした。
熱心に考え、企画する姿も伺えるものの、顧客役とのコミュニケーションを図っていく上で、言われたことをやるだけになってしまっており、主体性がない行動になっています。実際にこのように感じたご経験がある方も多いのではないでしょうか。
傾向を表すデータ
〈Z世代の特徴〉
(株)ファーストキャリアによる2023年卒内定者アンケート「オンボーディング(※)」によれば、オンボーディングに影響を与える要素である対人感受性・自己主張・評価懸念の3つのうち、新入社員をはじめとするZ世代は対人感受性と評価懸念が強いとされています。
これは、相手の立場に立って考えることができる反面、評価の方向軸が”正しいかどうか”であり、正解を求めるあまり自ら発して決断を下せない、行動に移せないといったことが特徴としてあげられます。
※オンボーディング(on-boarding)とは、乗り物に乗っていることを意味する「on-board」を由来とし、新入社員・中途採用社員など新しく組織に加わった社員の早期離職を防ぎながら、企業にとって有用な人材に育成する施策のことを意味する。
・CSI(Communication Style Inventory)の検査結果
『コーチングから生まれた熱いビジネスチームを作る4つのタイプ(鈴木義幸著)』では4つのタイプでの分析がされています。
Z世代の大手企業の方々に多いタイプはアナライザーであると感じています。但し社風や仕事の内容によって異なり、分散していることもあります。
《アナライザーの特徴》
正しさを求める人
- 正しくありたいと思う。失敗や間違いが嫌い
- 緻密に計画する。データを集める
- 系統だったことや規則を好む
- 変化や混乱に弱い
- 行動が慎重
- 先見性があり目標と現実を繋ぐ
《コミュニケーションにおける対人関係》
- 他人からは頑固・真面目と言われる
- 孤立してもあまり苦にならない
- 他人をあまり批判しない
- 自分のフィードバックを深刻に受け止める
- 自分のことはあまり話さない
- 安定した安全な人間関係を好む
研修でのフィードバックなど、少しでも何か言われると深刻に受け入れる傾向にあります。そのため、ネガティブに伝わりすぎないように工夫することが、円滑なコミュニケーションに繋がると考えられます。実際に指摘する際は、『改善点』ではなく『グッドポイントともっとポイント』、『更に良くするには』など、ネガティブフィードバックにならないように気を遣っています。
Z世代の傾向の背景
図に示されているように、新入社員・Z世代は従来の自分や家族、学校・塾だけの世界から、SNSやネットを通して
- 情報がたくさん入っている
- 自分の行動評価対象が広い(特にSNS)
という状態にあります。
周りを取り巻く環境は上記のように情報が多く、かつ自分自身を評価する対象が広いために、同調圧力・不安心理が強化されている世代であると考えられます。Z世代と呼ばれる方々はこのような環境下において生きている世代です。「周囲の反応に敏感である」傾向の背景に、このような環境があることを理解をすることでより円滑なコミュニケーションに繋がります。
3. Z世代とのコミュニケーションのコツ
新入社員への期待
企業が学生に求める能力として、以下の3つがあげられています。
- 主体性
- 課題設定
- リベラルアーツ(文系・理系の枠を超えた知識・教養など)
しかし現状、新入社員に企業や上司が何を求めているか理解しているか聞いても答えられる人は少ないです。
特にリベラルアーツの部分はテレビや新聞などのマスメディアから離れていることもあり、自分の得たい情報だけ得ることが顕著です。深く狭い情報の中で生きています。従って、当たり前に一般の人が知っている教養部分の理解が浅いです。
Z世代の話に限りませんが、知らないことが多く、求められることが分かっていないのが現状です。その為、求める像を新入社員に以下のようにきちんと伝えてあげることが大切です。
- 主体性→彼らなりの主体性の発揮を模索する
- 課題解決→彼らの情報収集力・学習能力を発揮してもらう
- リベラルアーツ→専門性のみでは社会では戦えないことを理解してもらう
受けてきた情報量の多さから、興味関心があることには非常に詳しいです。情報を収集、学習しながら課題解決を図る場面ではアウトプット能力も高く、その能力を感じられます。しかし、正解を求めるせいなのか、自分のことを過小評価しています。そのため、企業や社会から期待されている・認められているということを伝えることが重要です。
新入社員に伝えていくなかで響いていること
今までの自分の延長線上で勝負しない
ここ2・3年の方々はコロナの影響で大事な時期に外の人と繋がりを持てていないことや、テレビ・新聞などのマスメディア離れにより興味関心のあるものだけを深ぼって生きていることもあり、自らの視野に限りがあります。そのため、延長線上だと『井の中の蛙大海を知らず』となっていることを理解する必要があります。
仕事をするということは答えのない問いを解くこと
答えはネットにもない、上司や先輩も答えを持っていない、持っていても間違っているかもしれません。そのため、柔軟性のある多様な視野・思考を持つ新入社員が重要な役割を果たします。自分の導き出す答えにも正解・不正解はないことを自覚してもらう必要があります。
これらを上記の表のような形で、具体的に・範囲を限定し、時間を与えた上で伝えると、より効果的なコミュニケーションが見込めます。
最後に(EQパートナーズより)
技術革新による影響など変動著しい社会において広がる世代間ギャップをどう乗り越えていくか、具体的なアプローチのコツなどを示していただき大変有意義なセミナーでした。冨田講師、ありがとうございました。
EQパートナーズでは、皆様のご関心が高いと思われるテーマについて、随時、公開セミナーを開催しております。
今回のセミナーにて一端をご紹介しました冨田講師の研修を行うことも可能です。下記、ご希望等ありましたらお問い合わせいただけましたら幸いです。
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