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ジョブ型雇用になると何が変わるのか?Vol.2 (藤本治己)

EQパートナーズコンサルタントの藤本治己です。7月中旬から猛暑が続いています。この暑さのせいか、マスク姿の人がだいぶ減ってきたようです。さまざまなイベントでも声出しが許可されるようになり、日常が戻ってきたのは良かったのではないでしょうか? とは言え、まだコロナ感染がなった訳ではないので、皆様気を付けましょう。

先日、羽田空港に行きましたが、インバウンド観光客の方が本当に増えていますね。観光地では日本人より外国人の観光客の方が多いという話を聞きました。外国人観光客がいないのも寂しいですが、たくさん過ぎるのもなあ、と思うのはわがままでしょうか。

ジョブ型雇用と人財育成について

数か月前に書きました「ジョブ型雇用になると、何が変わるのか?」の続きです。今回は「ジョブ型雇用と人財育成」について考えてみます。

前提として、本コラムのジョブ型雇用(以下ジョブ型)は、あくまでも日本型としたいと思います。つまり、欧米型の狭義のジョブ型は、日本の雇用慣行・労働法制から、導入できる環境にないからです。

鶴光太郎先生の近著「人事の経済学」に説明がありますが、日本型ジョブ型雇用=限定正社員(職務/勤務地/労働時間のいずれかが限定されている)、“非”日本型ジョブ型雇用=メンバーシップ型雇用(以下メンバーシップ型)≒無限定社員というイメージが分かりやすいと思います。

会社は人事権を行使しにくくなる〜しかし多様な経験を通した成長は必要

あくまでも大企業のケースですが、ジョブ型を導入した時に、職務/勤務地/労働時間のうち、例えば職務を限定している場合、ある職務で欠員がでた時に会社が異動を命じるのではなく、社内公募で社員の意思で異動することになります。

言い方を変えると、会社は人事権の行使ができにくくなります。これまでメンバーシップ型では、職務や勤務地を変えながら、いろいろな必要な知識・スキルを身に付け、さまざまな横断的な業務経験を通じて長期に亘り成長機会を作ってきた部分がありますから、そこは工夫が必要になるでしょう。

仕事上での社員の成長を考えてみると、まず新入社員から一人で仕事ができるようになり、次に後輩の指導ができ、そして自ら担当業務について改善・改革ができるようになる。そして、業務の難易度・重要度は成長によって高度化されていきます。この点については、メンバーシップ型でもジョブ型でも同じではないかと考えています。つまり、ある職務(いくつかの業務の集まり)でのさまざまな経験を通じて、判断力を磨き、職務の専門性や熟練度を上げていくという成長のサイクルはメンバーシップ型もジョブ型も同様と思います。

社員の主体的な学びが求められるジョブ型雇用

それでは、マネジャーや経営者はジョブ型雇用の中でどのような人財育成をしていけばよいのでしょうか? マネジャーは担当者とは違い、チーム全体の最適な環境を作りチームでミッションをやり抜くこと、部下の成長に対する責任を持つことが求められます。

従来からマネジャーに対して新任マネジャー研修や選択型研修でコーチングやメンタルヘルス、チームビルディング、ダイバーシティなどの講座受講を義務化したり、推奨している会社が多いかと思います。ジョブ型では、マネジャーも公募が前提となっていくため、マネジャー社員の主体的な学びが重要となります。

経営者育成となると、さらに主体的な学びに加え会社の意思が重要となります。将来嘱望される社員にその意思を伝え、ハードなアサイメントや高度な経営者候補向け研修を与える、といった意図的なアクションが必要ではないでしょうか。

ジョブ型を導入した会社は、このように社員が自ら成長したい、挑戦したいと思うように人材育成システムへの見直しはもちろん、トップからどのような社員をレスペクトするのかを社員に発信していくことが重要ではないでしょうか。

ジョブ型では、社員に対して成長機会の提供をするために、社員自らの自立・自律的な行動が重要になってきます。会社として社員が自らどう成長するか理解・納得し、成長する努力を歓迎する組織を作ることが重要です。加えて、会社は社員が主体的に学びたいと考える研修を準備したり、経験したい業務に異動させる仕組みを柔軟に運用することで、社員のリテンションを図っていく必要がありそうです。

主体的に自らの仕事人生を創造していく時代へ~会社はその支援を

職務や勤務地、労働時間のどれかが限定されるようになると、社員にとってQOLが上がり、子育てや介護で従来の働き方ではしんどかった人も継続的に働けることになり良いのではないでしょうか? また、コロナ禍で在宅勤務の運用が強化され、現在も在宅勤務の頻度がコロナ禍の時期と変わらない企業が約半数というデータもあるようです。柔軟な働き方ができる企業が選択される時代になってきていますので、ジョブ型≒限定正社員を導入する事は働き方の選択肢を増やし、優秀人財の採用やリテンションに繋がりそうです。

社員にとっては、ジョブ型雇用は「あなたは何がしたいか、何で会社に貢献できるのか、だからこういう経験がしたい、こういう教育を受講したい」など、主体的に自らの仕事人生を創造していくことが求められます。自立と自律が必要になります。会社に任せておけば、何とかなるメンバーシップ型とは違うので、自らのキャリアを考え、チャレンジしていくことが重要です。若い方にとっては、遅い昇進と言われた日本ですが、大きく変革する可能性があります。

一方、職能等級制度や職務等級制度など、まだ一定の賃金までは年功的に上がる仕組みの会社が多いかと思います。多くの日本企業は「賃金後払い」の考え方で若い時は安い賃金ですが、教育費や住居費でお金が掛かりだすミドルまでは賃金が上がっていきます。

しかし、今後、ジョブ型雇用を通じて、社内と社外の職務価値が賃金に反映されるようになっていくと、ミドル・シニアにとっては「賃金後払い」が崩れていき、今まで定年退職した先輩たちと同様ではなくなるかもしれません。そしてマネジメント力や専門性、顧客対応力などを磨き、継続的な成長を求められるようになるのではないでしょうか。それとともに、会社は社員が求めるリスキリング領域のスキルアップを支援していくことも重要となるでしょう。

今後も、ジョブ型雇用などについて書かせていただく機会を楽しみにしてます。

EQパートナーズ株式会社 エグゼクティブ・コンサルタント 藤本治己

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