韓国ソウルより新年のごあいさつ〜サムスンなど韓国企業の強みと特徴(安部哲也)
新年明けましておめでとうございます。旧年中は格別のご高配を賜り、心より御礼申し上げます。
2025年が皆様にとりまして素晴らしい一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。
さて、私の方、2025年の年始は韓国ソウルにて過ごさせていただきました。一つの目的としては、昨年2024年1月に視察した米国ラスベガスでのCES2024におけるサムスン・LG・SKグループなどの韓国企業の経営やイノベーションに関心を持ち、その要因や背景を調べたいということでした。
その中で、今回ソウルから電車・バスで約1.5時間のスウォンにあるサムスン本社地域にあるサムスン・イノベーション・ミュージアムを視察させていただきました。
そこでは、
- 世界のエレクトロニクス産業の歴史
- サムスンの歴史、ビジョン、最新技術・製品など
が展示されており、解説付きでご案内いただきました。筆者が訪問時は、私一人だけに対して案内・解説をしていただきました。
その中で特に印象的だったのは、2000年くらいまでのサムスンの製品は機能面・デザイン面・サービス面などで、ソニー・パナソニック・日立・東芝などの日本企業のものに比べると明らかに劣っていましたが、特に2000年以降、機能・デザイン・サービスのレベルを飛躍的に上げ、スマートフォン・高画質テレビ・スマート冷蔵庫など、今や日本企業の製品を凌駕するものとなってきている点です。
韓国人に聞いても、かつてはソニーをはじめとする日本製品が最も評価されていましたが、現在ではサムスンやLGなどの製品やサービスが大きく向上し、日本製の電気製品が選ばれる機会は少なくなっているようです。車に関しては、トヨタ・レクサスは人気があるとのことでした。
サムスンの場合は特に、半導体とディスプレイをエレクトロニクス製品の中核技術となると予測し、経営判断のもと、積極的な大型投資を続けてきました。このようなオーナー的な経営で、中長期的、かつ大胆な経営判断が成功要因のように思います。また韓国の人口は少ない(約5,000万人:日本の半分以下)ため、韓国国内市場だけではなく、最初から世界市場を目指して、製品開発・戦略を立てていることは、サムスンに限らず、LG・SK・ヒュンダイなどの韓国企業の特徴です。
2000年当時、サムスンの経営幹部は「”MIK”が問題だ」と述べていました。”MIK”とは、”Made In Korea(韓国製)”で韓国製というだけで、欧米や日本企業と比べ、ブランドイメージが低かったということです。その後、サムスンは「世界でトップ5のブランドに入る」というビジョンを掲げ、2023年の世界ブランドランキング(Best Global Brands 2023 by Interbrand)では世界5位に入っています。(参考/Toyota:6位、Honda:27位、Sony:36位)
韓国のエレクトロニクス製品、自動車、映画、ドラマ、エンタテイメントなどの影響もあり、現在、”MIK”は、”MIJ (Made In Japan)”にも負けないブランド力を持ちつつあります。
また利益面でも2023年は
- サムスン電子(Samsung Electronics)純利益: 約221億米ドル、世界順位: 15位
- トヨタ自動車(Toyota Motor) 純利益: 約181億米ドル 世界順位: 34位
- ソニー(Sony)純利益: 約110億米ドル 世界順位: 36位(出典: Asian-links.com)
となり、利益面でもすぐれたものとなっています。
日本企業が韓国企業から学べることは、下記のように思います。
- オーナー的視点を持った中長期的思考とスピード経営
- 最初から国内、海外市場の区別をせず、グローバル市場向けにビジョン、戦略を打ち立てること。
- AIなどの最新技術の取り入れたイノベーションと他社連携 など
逆に韓国企業と比較した日本企業の強みは下記だと考えます。
- 経営理念、パーパス経営
- 現場現物・カイゼン
- ESG(Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス))経営 など
弊社EQパートナーズでは、2025年は特に下記の項目に重点を置きリーダー・人財開発に取り組んでまいりたいと思います。
- グローバルマインド・スキル開発
- スピード経営と変革のリーダーシップ開発
- 顧客・社会価値創造を目指したイノベーション
- 投資対効果(ROI)の最大化 など
弊社でお役に立てそうなことがあれば、いつでもお声がけいただけましたら幸いです。
本年も引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
ご参考
- SAMSUNG INNOVATION MUSEUM 事前に予約を入れておくと、許可制で見学が可能です。(韓国語・英語・日本語あり)
- CES2024レポート(安部哲也「世界最大のICT見本市 ラスベガスCES2024のトレンドと日本企業の今後の課題について」): サムスン、LGなどの韓国企業の積極展開が印象的
EQパートナーズ株式会社 代表取締役社長・立教大学大学院ビジネススクール 客員教授 安部哲也
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