イノベーション発想法に生成AIを活用する方法(稲田 知己)
こんにちは。EQパートナーズ パートナー講師/コンサルタントの稲田 知己です。
みなさんは、話題の「生成AI」と仲良くなっていますか?
ChatGPT、Google Gemini、Microsoft Copilotといった生成AIは、質問への回答、文章作成、プログラミングコード生成、絵画・動画・音楽を生成するなど、人間の創造的な部分までをもカバーできるようになりつつあります。幅広い分野に急速に広がりつつあるため、皆さんの中には、不安感や警戒感をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
でも「生成AI君」は、みなさんの「個人秘書」のように活用できるかなりの優れものです。まだあまり活用していないという方も、気軽に、なんでも相談や依頼をしてみましょう。
使い方次第でアイデアのヒントを得られる生成AI
私はEQパートナーズにおいて、企業研修では新規事業の事業計画作成のアドバイスや支援をし、その基礎となる経営戦略やマーケティングなどの講師も担当しているのですが、生成AIの使い方を工夫すると、新規事業創出のための初期のアイデア発案で大変助かります。経済学者シュンペーターによるとイノベーションとは既存の要素の「新結合」であるとのことですから、世界中の膨大な既存情報を網羅的に検索できる生成AIからは、アイデアのヒントを得やすいのです。
では、具体例を見てみましょう。今回は、「総合電機メーカーの10年後を見据えた新規事業アイデア」を考えてみます。
イノベーション発想の手法のひとつに、まずはビジネスの将来の外部環境分析から影響因子を抜き出し、シナリオを作成するアプローチがあります。この基本的なフレームワークとして有名なのがPEST分析です。
さっそく、私の「秘書」の生成AI君に某総合電機メーカー(以下A社とします)の10年後を見据えた事業環境のPEST分析を依頼してみました。みなさんも試す際には、気になる具体的な会社名を入力してみてください。
返ってきたPEST分析の一部を紹介しますと、例えば社会や技術に関しては以下のように回答がありました。
社会 (Social)
1. 少子高齢化や都市集中と地方過疎化など人口動態の変化
2. オンラインサービスの普及や健康志向など消費者ニーズの変化
3. デジタルスキルや高度専門知識に対する教育需要
4. 働き甲斐や労働時間など働く意識の変化
技術 (Technological)
1. AI技術やロボティクスの進化
2. IoTデバイスの増加とビッグデータ解析技術の進展
3. 太陽光、風力、蓄電技術などの再生可能エネルギー技術の進歩
4. 次世代ネットワークが普及し進展
いかがでしょうか? 「なるほど」と思える内容が多いですよね。
これを自分で調査するには相当な時間がかかりますが、数秒で回答が来ます。これがAI活用の大きな魅力です。
自分の頭で考えることで、さらに発想を広げよう!
ただし、生成AI君に頼るのはここまでで、この先は自分自身の頭脳に頼りましょう。具体的には、以下のステップで進めていきます。
◆発想を広げるステップ
- 注目ポイントをピックアップ
- AIから得られた情報の中から、特に気になるトピックを選びます。
- 未来のシナリオを描く
- 1を発案の刺激材料として選んだ要素を組み合わせ、「こうなったら面白い」「実現できたら役立つ」といった、みなさんが未来で実現してほしいシナリオ(ストーリー)をイメージします。
- その企業における実現可能性を探る
- 2のシナリオを元に、その会社の立場であったら、それをどのように実現できそうかを発案します。
たとえば、『社会』の「高齢化」や「健康志向」に注目し、またA社の強みの『技術』の「AI」「IoT」「ビッグデータ解析」などに注目してみます。ここでは事業分野を『医療・介護分野』に絞って「新結合」のアイデアを発案してみます。つまり、AI・IoT・ビッグデータ解析×医療・介護分野という組み合わせです。
「遠隔医療」や「介護ロボット」といった事業可能性は、すでに報道などで多くの方が目にしたことがあるかもしれません。そこで、今回はそれ以外の新規性を意識してみます。
例えば、A社が今後の経営戦略として「インフラ化」や「プラットフォーム化」を目指していると仮定してみます。その方向性に沿ったアイデアを発案してみましょう。
例えば、
・高齢者のデータを一元管理する総合プラットフォーム
病歴、服薬状況、バイタル情報など、個々の高齢者のデータを一元管理する仕組み
・パーソナライズド・メディケーション・プラットフォーム
高齢者の健康状態や生活習慣に合わせた服薬プランの推奨、認知症兆候診断による予防プランの提供、記憶力や認識機能を維持・向上させるトレーニングプログラムを提供する仕組み
などはいかがでしょうか。
これらは既存のコンセプトをベースにしていますが、A社ならではの技術やリソースを活かすことで、10年後のニーズに対応できるA社らしい新しい価値を生み出すアイデアを創出できます。
発案訓練の相手として生成AIを活用しよう!
このように、机上での発案訓練の相手(みなさんの秘書)として、生成AI君は頼もしい存在ですので、思い切って仲良くなってみませんか。情報収集のスピードや網羅性はもちろんのこと、柔軟な視点で新しい切り口を提案してくれるため、イノベーション発想の初期段階で大いに役立ちます。
まずは、気軽に「こんなこともできる?」と試してみるところから始めてみましょう。あなたの次のイノベーションが、そこから生まれるかもしれません。
※注意点 : 生成AIは万能ではありません。既存の情報のなかには信頼性の確度の低いものが含まれるため、回答の中には疑問符がつくものもあります。あくまでも最終判断はご自身で行うようにお願いします。また、機密情報や個人情報などを入力する事も避けた方が良いでしょう。
EQパートナーズ株式会社 パートナー講師/コンサルタント 稲田 知己
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