若手グローバルリーダーの育成(中村好伸)
パナソニックの本社採用センター・人材開発責任者を務め、
全社のグローバル化を推進してきた経験から、
2011年の早稲田大学総合研究機構トランスナショナルHRM研究所会報に
「若手グローバルリーダーの育成」というテーマで以下の文章を寄稿しました。
抜粋してご紹介します。
皆様の会社のグローバルリーダー育成の参考になれば幸いです。
「私たちの使命は、生産・販売活動を通じて社会生活の改善と向上を図り、世界文化の進展に寄与することである。」この「綱領」は、パナソニック・グループの事業の目的とその存在の理由を簡潔に示したものであり、あらゆる経営活動の根幹をなす「経営理念」である。
昭和4年(1929年)、創業者の松下幸之助が制定して以来、現在に至るまで、
私たちは常にこの考え方を基本に事業を進めてきた。
海外事業展開にあたっても、その国の発展のお役に立つことを第一義としてきた。
この理念の下、当社の人事施策は「経営の根幹は『人』にあり、ものをつくる前に人をつくる」
という考え方で貫かれており、その具体的な特徴として、「全員経営の実践」、「実力主義の徹底」、「人間尊重の経営」という3点を挙げている。
この考え方は普遍的なものだが、より創造的なソリューションをお客様に提供し、21世紀の社会に貢献するためには、社員一人ひとりの自主性や個性が今まで以上に発揮されなければならない。
そこで社員一人ひとりが「お客様満足」という会社の追及する価値、
いわば当社の「志」に共鳴しつつ、自らの創造性の発揮を通じて
社会への貢献と自己実現を果たすという、新たな「自立した個人」と「会社」の関係を築くこと
を基本の考え方として、様々な人事施策への取り組みを進めてきた。
その基本は 経営環境が大きく変わる中にあっても「不易」と「流行」を峻別する考え方である。
つまり変えてはならない「不易」であるパナソニックの経営理念に基づく経営の中で
環境変化に対応すべき「流行」として世界中の人事・マネジメント・組織の良い仕組みを
積極的に導入する「松魂球才」 (Global Standard Management with Panasonic Philosophy)
の考え方といえる。
人材育成については 1998年に「グローバル・キャリア・デベロップメントシステム」として
「日本人・現地人トータルでの経営幹部育成」「グローバル要員の計画的育成」「日本人社員全体のグローバル化」に取組んだ。
具体的には、 昇格基準への英語基準の導入や幹部研修として日本人・現地人向けの2つの社内版MBAコースをスタートさせた。
この研修は「P-EDP(パナソニック・グローバル・ エグゼクティブ・ディベロップメント・プログラム)」として 2011年度から グローバルに一体化して運営されている。
また2003年には 年齢、性別、国籍、在籍会社などを問わない『真の最適任者』 の採用・確保、定着、育成に向けたグローバル共通の体系的な新たな人事制度
「PGE」(パナソニック・グロ―バル・エグゼクティブ)システムを構築した。
海外会社社長を含むグローバル幹部本社管理ポスト約500を定め、
それぞれの役職 のジョブ・ディスクジプション(職務の内容)も明確化した。
実績評価や報酬の 算定を容易にするため、様々な基準で評価し、点数化する仕組みを作った。
ポスト 評価に基づいて、「PGE」の幹部は仕事の実績だけでなく、リーダーシップコンピ テンシー(行動特性)によっても評価される。
具体的には、パナソニックの経営の 基本となる「経営理念」、「会社が求めるリーダー像」への理解、松下経営幹部 としての「行動様式特性」、グローバルで一般的なハイパフォーマーの「ベンチマーク」の4要素である。
実績とコンピテンシーの2つの評価方法は、今、幹部 ポストに就いている人材を評価するだけでなく、彼・彼女らの後継者となる次世代の幹部候補の抜擢・育成にも活用している。
「経営の根幹は『人』にあり」の理念に基き、多様な国籍・文化・言語の人材が入り交じりながら
相互に鍛え合い、エレクトロニクス事業を通じて社会の発展に貢献することを目指し、
今後も若手グローバルリーダーの育成に取り組んで行く。
この文章をお読みいただいてどのように感じていただいたでしょうか?
皆様の会社も、経営理念やミッションに沿ったグローバルリーダーの育成を推進されていることと思います。
私共EQパートナーズは、マネジメント人材・リーダーの育成に貢献することをミッションに教育活動を行っておりますので、お声かけいただければ幸いです。
EQパートナーズ株式会社 執行役員・エグゼクティブ・コンサルタント・講師 中村好伸
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