ジョブ型雇用になると、何が変わるのか?(藤本治己)
変わりつつある企業と社員の関係
初めまして、エグゼクティブ・コンサルタント担当の藤本治己と申します。30年くらい企業の人事部門に籍を置いていましたので、企業の人事労務の諸課題に興味・関心があります。
特に3年前からのコロナやロシアとウクライナの紛争等とによって、経営環境の不透明さが増し、また社員の働き方や仕事に対する考え方が大きく変わってきました。結果として企業と社員の関係が予想以上に変わらざるを得ない状況となってきたように思えます。
最近の人事・人財育成のお悩みごと
そこで、最近よく伺う人事や人財育成に纏わるお悩みごとを順不同に並べてみます。
- ジョブ型雇用を自社に導入するか
- 人的資本経営を目指しつつ、雇用の硬直化にどう対応するか
- 人員不足であるもののミスマッチ人財の雇用を継続している
- 若手抜擢はしたいが、定年延長でポスト不足
- 社内の内向き志向を解決しつつ、Diversity&Inclusionを推進していきたい
- DX等のリスキリングを社員にやらせたいが、社員の自律的成長は阻害しないか
- 管理職・経営者候補育成したいが、優秀社員の専門職志向や管理職忌避がある
- グローバルとローカルの処遇差が大きいため、グローバル異動が難しい
- 要員不足のため人事異動したいが、ジョブ型のためキャリア採用で対応する
- 働き方・働く場所・時間の柔軟さの推進は、従来型の労務管理で対応できない
このような相反するような課題に対して、我々はどのような考え方で施策を打っていくべきでしょう?
Aという施策を打つとBに影響を及ぼし、Bを何とかするとCに影響するということで、複雑に絡み合っています。人事や人財育成に関してのこの手の問題は単純に割り切れないことが多くないですか?
「ジョブ型雇用」が新卒採用と新人教育に与える影響
さて、人事部門のバズワードになっている「ジョブ型雇用」について、企業と社員にどのような影響があるか、何が変わるのか、変わらないのか、変えてはならないことは何か。今回は、新卒採用と新人教育の切り口で考えてみたいと思います。
まず当面変わらないことです。ご存じのように、ジョブ型は日本や韓国以外の欧米等各国の雇用慣行と言われてますが、それらの国では、大学卒業時点で、ある程度専門性があるか、インターン経験や資格取得等を済ませて、仕事ができる状況で入社します。キャリアアップするために、会社を退職して大学で学び直すリカレントは当たり前です。
現在の日本では、職業に直結した教育をしている大学は、一部理系研究者等は除きほぼ皆無ですので、結果として、新卒には即戦力の専門性はありません。新入社員の多くが営業に配属される会社が少なくないと思いますが、大学に営業学部はありません。
そのため、新卒入社してから、新人研修や上司指導や仕事を通じてビジネスマンとしての基礎、マインドセット、専門知識、スキルを身に付けていくことになります。当面大学教育は大きく変化しないので、この状況はほぼ変わらないでしょう。
そうなると、新卒採用の場合のジョブ型雇用は、興味がある、やりたい仕事に配属を約束するという意味になりそうです。会社側は、一定の塊に括ったジョブごとに採用することになり、学生に人気がない又は知られていない仕事の採用に苦労するという側面がありそうです。
これを回避するためには、就社型とジョブ型のハイブリッド型採用をするか、新卒一括採用を諦めて、キャリア採用中心にする方法が考えられますが、なかなか社会構造になってしまっている新卒一括採用は労働力確保と言う点でやめにくいのではないでしょうか。また社会的意義も大きいと思います。
次にジョブ型の新人育成について考えてみます。ジョブ型では、ジョブ毎に一人前になるための時間軸や経験、スキルを想定しておく必要がありそうです。つまり一人前になるまでのロードマップを新人に示していくということです。
その職務、タスク、習熟レベル、コンピテンシ―、成果等で処遇を決めていくので、目標設定を明確にするためです。しかしながら、現状の日本企業では、職務範囲があいまいな場合も多く、そのような場合は組織や仕事の在り方を変えていく必要があるでしょう。
最後までご一読いただきありがとうございました。次回以降のコラムでは、ジョブ型雇用における人事異動、管理職の仕事、人財育成、経営者育成、退職率、人事の仕事などについて、考えてみたいと思います。
EQパートナーズ株式会社 エグゼクティブ・コンサルタント 藤本治己
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