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女性活躍推進法から10年 「女性活躍」のその先へ(堀井利江)

女性活躍は「経営課題」の時代へ

女性活躍推進法が施行されて今年で10年。みなさんの職場ではこの10年にどんな進化があったでしょうか。2026年4月には、女性活躍推進法が改正され、従業員101人以上の企業にも、男女間賃金差異や女性管理職比率などの情報公表が義務付けられました。女性活躍は「取り組むと望ましい施策」から、「企業価値を左右する経営課題」へと大きく位置付けが変わったと言えるでしょう。

この法改正の本当の意義は、情報開示そのものではないと考えています。企業に問われているのは、「数字を公表すること」ではなく、「多様な人財が活躍できる組織をつくれているか」という経営の姿勢だからです。言い換えれば、女性活躍の先にある組織の在り方を問われているのです。

世界経済フォーラム(WEF)が公表した2025年のジェンダー・ギャップ指数において、日本は148か国中118位という結果でした。教育や健康の分野では男女差は比較的小さい一方で、政治や経済分野における女性の参画の遅れが大きな課題となっています。日本企業には、こうした課題の解決に向けて取り組むべきことが数多くあります。

制度だけでは人は活躍できない

女性活躍のための制度が充実した企業は増えてきています。しかし、重要なのは経営層が多様な意見に耳を傾け、管理職が一人ひとりの成長を支援し、挑戦を後押しする文化が根付くことではないでしょうか。女性活躍は、女性支援施策の成果というよりも、「組織マネジメントの質」を映し出す結果と言えるでしょう。

もちろん制度は重要です。育児休業や短時間勤務、テレワークなど、働き続けるための環境整備は欠かせません。しかし、制度があることと、それが活用されることは別問題です。「管理職になりたいと思えない」「ロールモデルが身近にいない」「育児との両立を考えると挑戦をためらう」といった声は、今なお少なくありません。制度を活かすのは組織文化であり、その文化をつくるのは日々のマネジメントです。管理職が部下のキャリアに関心を持ち、多様な働き方を認め、一人ひとりの強みを引き出そうとする姿勢があって初めて、制度は意味を持ちます。

一方で、制度活用というと、「配慮」が重要視されがちですが、必要に応じてチャレンジングな成長の機会を提供することも重要です。タフな業務は女性よりも男性に任されがち、という声をよく聞きます。能力があっても、十分な経験を積む機会に恵まれず、自信を持てないまま管理職への挑戦をためらうケースも少なくありません。評価するとき、業務をアサインするときにアンコンシャスバイアスが働いていないでしょうか。いずれにしても一人ひとりをしっかり見ていくことが必要になります。

AI時代だからこそダイバーシティが競争力になる

さらに現在、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。少子高齢化による人財不足、価値観の多様化、そして生成AIの急速な進展です。新たな価値を生み出す問いを立てたり、異なる価値観を融合させたりすることは、人だからこそできる役割ではないでしょうか。

だからこそ、AI時代において企業の競争力を左右するのは、多様な人財が活躍できる組織づくりです。ダイバーシティは「配慮すべきテーマ」ではなく、「企業の成長戦略」であり、「イノベーションを生み出す基盤」、そして思考の硬直性を排除する「リスク管理」と考える必要があります。

そのためには、女性管理職比率や男女間賃金差異といった指標を単なる目標値として捉えるのではなく、「なぜこの数字なのか」「組織のどこに課題があるのか」を経営として考え続けることが重要です。人的資本への投資は短期間で成果が出るものではありません。しかし、経営トップが強い意思を持ち、管理職がその実践者となることで、組織は確実に変わっていきます。

女性活躍の先にある「誰もが活躍できる組織」へ

これから企業が目指すべきは、「女性活躍」のさらに先にある「誰もが活躍」ではないかと考えています。組織には女性だけではなく、若手、シニア、外国籍社員、育児や介護と仕事を両立する人などがいます。また属性やおかれた状況の多様性だけでなく、考え方、価値観など個性における多様な人財一人ひとりが能力を発揮し、互いの違いを強みに変えられる組織が求められます。そのような組織は変化への適応力が高く、新たな価値を生み出し続けることができます。

今回の女性活躍推進法改正は、女性の活躍を端緒として「人を活かす経営ができていますか」という社会から企業への問い掛けと考えられます。この機会を単なる法改正への対応で終わらせるのではなく、自社の組織文化やマネジメントを見つめ直す契機としていただきたいと思います。

女性活躍から組織全体の活性化、へ。その視点の転換こそが、人的資本経営の本質であり、AI時代を見据えた企業の持続的成長につながる第一歩です。「誰もが活躍できる組織」を目指すことが、これからの企業に求められる姿勢ではないでしょうか。

■EQパートナーズの女性活躍推進導入事例 株式会社NTTドコモ様 女性社員向けリーダーシップ養成研修

EQパートナーズ株式会社 執行役員・エグゼクティブコンサルタント 堀井利江

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